抜き打ち検査
北京オリンピックでの新種目「スキージャンプ混合団体」が2月7日に行われましたが、スーツの規定違反により10カ国中4カ国延べ5人の女子選手(しかも強豪国)に失格者が出るという国際大会では前例のないとんでもない事態が起こりました。その内の1人は日本チームのトップバッターであった高梨沙羅選手でした。
高梨選手が失格した理由は、1本目を飛んだ直後の「抜き打ち検査」でスーツの両太もも部分が規定より2㎝程大きいと判断されたためであり、スキージャンプ競技においては、スーツの大きさや素材・伸縮性、体重、板の長さ等浮力に影響する細かい規定が設けられていて違反していると失格となります。
5日に行われたノーマルヒルで着用して大丈夫だったスーツを着用していたのに、体型の変化で違反スーツになってしまうとは何ともシビアな競技だと思いました。 (実技においては1人1人気象条件や滑走路状態が異なるアバウトな面があるんですけどね。)
そして、競技スポーツである限り決められたルールや規定は厳守しなければなりませんが、今回のスキージャンプ競技での「抜き打ち検査」については本当にそんなルールで競技者が納得しているのだろうかと驚いてしまいました。
「抜き打ち検査」の意味を辞書で調べてみると、「事前の予告なしに、適格・不適格や異状がないか等の調査を行うこと」と示されていて、いろいろな競技スポーツにおいて「抜き打ち検査」が行われていますが、自分的にはドーピング検査のイメージが強いです。
スキージャンプ競技においては飛ぶ前に全員検査を行っていて、そこでは問題なしとして実技をさせているのに、終わってから全員ではなく一部のみに対して「抜き打ち検査」を行い違反が見つかれば失格というルールであることを知って、頭の固い私にとってはこれが公平公正なルールだとはどうしても思えず理解に苦しむ所です。
「飛ぶ前に全員検査をしっかり行い、規定違反があれば一定時間の猶予を与えて再検査する。(再検査に通らなければ飛ぶ前に失格)」とか、「飛んだ後に全員検査をしっかり行い、違反があれば失格とする。」みたいなわかりやすいルールを行えないのには、やりたくてもやれない大人の事情が多分あるんでしょうね。
競技スポーツはまさしく勝負の世界で、勝つためや記録を伸ばすためには手段を選ばないという人は必ず出てきます。 ツール・ド・フランス(世界一有名なサイクルロードレース)で7連覇したランス・アームストロングが行った不正は映画にもなりましたが本当に酷いものでしたし、大記録を打ち立てたMLBのスーパースター選手で筋肉増強等の薬物使用が発覚して殿堂入りできない人がたくさんいます。人間は弱い生き物で己の欲望には勝てません。だから不正を見つけるための方法、そして不正をさせないための抑止効果としてある種の「抜き打ち検査」が必要なことについては疑いの余地はありません。とはいえ、「抜き打ち検査」をどのようにルールを守るために取り入れるかにおいては、今回の件は本当に中途半端で摩訶不思議なルールだと感じました。
スキージャンプ競技に身を置いている人達は現行のルールについては百も承知しているので、本人やコーチ・関係者はミスを認めて謝罪されていますが、やはり一部のアホどもが早速誹謗中傷・暴言をネットにさらし始めました。そのような平気で人を傷つけて何とも思わないクソ輩がいることが、日本にとっては沙羅さんの失格より何十倍も悲しいことであり残念なことかも知れません。人は人を傷つけたり責めたりするために生まれてきたわけではないのですから、それに反するような振る舞い・行為についてはもっともっと社会における細かいルールや規定が必要なのかも知れませんね。
沙羅さん、ドンマイ。 思い悩むことはありませんよ。応援しています。